いま、私はちょっとしたスランプに陥っている。ドクター・スランプ（アラレちゃん！）ではないぞ。

　どういうスランプか。書いたモノがなかなか使ってもらえないのである。一応、私の職業は３流とはいえエディター＆ライターである。これまた３流大学だが多少の学歴も積み、質的にも量的にもそれなりの文章を書いてきたつもりだ。原稿用紙数百枚にも及ぶ論文も書いた。

　だからといって、当然こうした経験だけで編集の現場ですぐにやっていけると思うほど私は自惚れてはいない。それなりの下積み期間が必要だということは承知していた。しかし、問題は経験とは別のところにあった。

　ある原稿を書いて出版社に持って行くと、２回の校正（１回目が初校、２回目を責了という）が入る。この校正がクセ者なのだ。

　校正作業は、校正を生業としている人が校正をやるわけで、その校正人（と言うかどうかは知らんが）は意地でも誤字を探し・脱字を探し・矛盾点をほじくり出し・ちょっとでも内容の曖昧な点があれば指摘してくるのだ。あまりの重箱の隅のつつきぶりに、ときどき頭に来るときがある。

　たしかに、私の方が誤字・脱字・明らかな事実誤認をしている場合も少なくない。校正人も生活がかかっているわけだから死にものぐるいで粗を探しているに違いない。少なくともそう思いたい。だけど正直言って、自分の書いたモノはできるだけ直さないでもらいたい、というのがライターとしてのホンネである。しかし冷静になって考えてみると、直されないような原稿を私が書けるようになるべきだ、というのがスジなわけで、にっくき校正人は全く何の咎もないのだ。

　さて、別の話題になるが、文章には書く人によってクセがある。私もしばしば指摘されるのだが、まず私の文章は「冗漫」らしい。要するに、ムダに長いのだそうだ。さらに、「ギャグが滑っている」そうだ。

　先に指摘された点、即ち「冗漫」という点については、確かに反省すべき点は多い。私のホームページの文章を見てみてもどれもが冗漫だ。原稿を書いてもムダに長い。１行で説明できることに数行を費やしている。

　特に情報誌の場合、決められた字数で書かなければならないのは当然である。限られたスペースにいかに情報を詰め込むか、その情報量が、その雑誌の価値を決めるわけだ。書く側としても、情報誌なら情報誌、ファッション誌ならファッション誌というような、書かせてもらっている雑誌の性格を熟知した上で書くのがライターの仕事なのだ。その点私は未熟者。素直に認めよう。ごめんなさい。

　ただし、今まで私は字数を制限されたテキストを書いてこなかったという点は弁解したい。いやむしろ、アカデミズムでは「長ければ長いほどよい」という特殊な風習があるのだ。原稿用紙の枚数でその論文の価値が計られる、というのもあながち過言ではでない。とはいっても、短い文章を書けない私は悪者であることに変りはない。

　さてもうひとつの指摘、すなわち「ギャグが滑っている」というのはどうか。これはハッキリ言って私は納得がいかない。「ギャグが滑っている」と指摘してくれた人の文章を読んでみた。つまらなくはないが、むちゃくちゃ面白くもない。ちょびっとだけ面白いのだ。

　私の書く文章の全部が全部、面白いと自負するほど自惚れてはいないが、なかには面白いかな〜、とか思えるものはいくつかある。こうしてホームページをつくり、自分以外の他人に読ませるために文章を書いている以上、読んでいて面白いものを書きたい。この文章だってそうだ。さらに言えば、私に限らず、文章を書く人は誰だって「面白い」と言われたいはずなのである。

　にかかかわらず、「ギャグが滑っている」とはどういうことか。私はこの文章の冒頭で以下のような文章を書いた。

「いま、私はちょっとしたスランプに陥っている。ドクター・スランプ（アラレちゃん！）ではないぞ」。

　これは明らかにギャグだ。だがあまり面白くない。この冒頭文を見て笑う輩はけっしていないだろう。

　しかし私は思うのである。ギャグがつまらない＝「ギャグが滑っている」とは限らないのではなかろうか？すなわち、つまらないギャグも、読み手を引き込む一種のテクニックになりうるのである。

　以前、「美容雑談」で私は次のような文章を書いた。

「先日、髪を切りにいった。場所は私のガラにまるで合わぬ、原宿。ナウなヤングが集う街だ」。

　私はこの一文を特にギャグと意識しないで書いた。「いまどき『ナウなヤング』だって。ぷぷっ。」とかいって笑うたわけ者は、いるわけないのだ！そんなことは書いている私にだってわかっているし、読んでいる人だって同様だろう。

　ようするに、「つかみ」なのだ。つまらないギャグは。

　……と、こんなつまらぬコトを力説してもしょうがない。それに「この『つかみ』以外で、キタジマの文章って面白い箇所があるの？」という疑問も湧いてくる。私自身、何が面白いのかもよくわかっていない。おもしろがっているのは私だけで、他人からしてみれば全く面白くないのかも知れない。もしかしたら、これから面白くなるのかも知れない。

　まあそんなことはどうでもいい。というわけで、私はスランプに陥っているのだ。くれぐれも言っておくが、ドクター・スランプ（アラレちゃん！）ではないぞ！

　こんなこと書いているから「ギャグが滑っている」と言われるんだろうなぁ。

　まあ逆に言えば、こんなギャグの滑りまくった文章が書けているわけだから、スランプに陥っているとは言えないわけだ。いやむしろ、「ギャグを滑らせまくってやる！」くらいの気概でホームページの更新を続けていこう。仕事もきちっとできるようにもなりたいものだ。