学生時代からか、わたしは布団で眠らなくなった。

　冬はこたつの中で寝る。夏は畳の上で寝る。秋と冬は厚着をして畳の上で寝る。布団がなくていいところは楽なこと。眠くなったらすぐ横になれば眠れる。布団を敷くことがまず面倒だし。だから、キャンプとか行ってもあまり苦労せずに眠れる。これなら将来ホームレスになっても立派にやっていけるだろう。どうせ負け組決定なのだから、いまのうちから将来に備えて路上で寝る練習をしておくに越したことはない。

　だが、最近はちょっとマシになって寝袋で寝るようになった。去年の朝霧JAMのついでに買った寝袋だ。蓑虫型の本格的なものではなくて、封筒型をした簡易的なものだ。これなら場所も取らないし、５秒で敷ける。サイドがファスナーになっているので、暑くなったらこれを開ければ通気が得られる。便利だ。

　そして寝袋の魅力は心地よい包まれ感。マットに巻かれてシバかれるような感覚！……ではなくて、フカフカの綿（羽毛でないのが残念だが）にくるまれる、あたかもロールケーキのクリームになったような甘〜い気分。これは畳の上に寝る感覚とは一線を画す。

　あとひと月もすればこの寝袋ともおさらばして、またホームレスの予行練習が始まるわけだが、寝ることが最大の楽しみのわたしにとって、この発見はなかなかに大きなものであった。いまから今年の秋が楽しみだ。