２カ月ぶりに美容室に行った。髪を染めてみた。カネがないうえにいい歳して（カット1050円ポッキリの床屋ではなく）美容室に行くのかというと、床屋には怖くて通えないからだ。

　小学生のころ、わたしは町田市内ではきわめて有名な理容室チェーン「アダム」に通っていた。理容アダムの支店は「○○店」ではなく「○世」と呼ばれていた。ま、ルパン三世と似たようなものだ（そうか？）。アダムはたしかV世かVI世くらいまであったと思う。町田ではまさに理容室王国を築き上げていたのだ。ちなみにアダムの場合はローマ数字が基本だ。

　わたしがもっぱら通っていたのは、ローカルな話題で悪いが森野の町田図書館前の店、「アダムII世」だったと思う。小学生の頃は「スポーツ刈り」、中学生になったら「普通に」といえば適当に刈ってくれるのだが、切る前に必ず聞かれることがあった。それは、「モミアゲは真っ直ぐにしますか、ナナメにしますか」ということであった。

　別に真っ直ぐでもナナメでもどっちでもいいのだが、しかも大差はないのだが、なぜかどんな店員からも必ず聞かれたのだ。アダムはモミアゲにこだわっているらしい。だがそれ以上に問題なのは、モミアゲを「残す」選択肢が存在しない、ということである。ナナメでも真っ直ぐでもモミアゲはきれいさっぱり刈り取られるのだ。おいおい、いまどきテクノカットかよ！

　高校に入学してからも、野球部だったので（丸刈り）しばらくはアダム王朝の支配下におさまっていたが、高校２年あたりから丸刈りの規則はなくなったため、髪が伸ばし放題になると（当時は、モッズとかヒッピーのスタイルの服装がリバイバルして長髪が流行った）、自分や友達に切ってもらうようになった。晴れて自由の身になったわけだ。

　とまあ、そういうわけで床屋に行くと、モミアゲが真っ直ぐに、あるいはナナメにきれいさっぱり切られてしまう恐怖心が未だ抜けないのだが、現状はどうなのだろうか。床屋には10年以上行っていないことになる。

　今日美容室に行ったとき、隣に座ったのがどう見ても中学生くらいの女の子だったのを見て、「そろそろ美容室も卒業かな」と思い始めたのだが、過去のトラウマを思い出すとどうしても床屋に行く勇気は出てこないのだ。

　本題にしようと思っていた髪を染めた話を全くしていないが、この続きはやる気が起きれば書こうと思う。