ラヴ・クリニック　第17回　勝手に恋愛相談（その13）

この企画は、 サンマリエという恋愛相談サイトから勝手に質問を拝借して答えてあげるという、善意に満ちた企画です。この企画ももう17回を数えるのですね。さてさて、今回の相談に耳を傾けてみましょう。

■容姿を好きになれない彼と結婚して幸せになれるのでしょうか… （28歳・女性） バツイチの28歳です。付き合って４ヶ月の男性と、４月に結婚することになりました。 こんなに私を愛してくれる人は2度と現れないかも！と思う一方で、彼の外見がどうしても好きになれません。 父親は「もっと付き合ってから結婚すればいい」と言いますが、式場や新居も決まり、もう後戻りできない状況です……。中身は大好き、でも容姿が好きになれない……という人と結婚して、本当に幸せになれるのでしょうか。 こんなことで結婚を躊躇するのってヘンですか？アドバイスをお願いします。

◆「容姿」「ルックス」ってなあに？
ほほう…。彼のルックスがどうにも気に入らない、というわけですか。まず、ここでいう「容姿」ってなんなんでしょうか。顔面が少々残念、身長が若干物足りない、短足、ハゲ、毛深い、出川哲朗に似ている（わたしもよく言われます）、などの身体的なものなのか、あるいは服装のセンスなのか、それとも仕草やマナー、礼儀作法といったものなのか。そこら辺がいまひとつわかりかねるところです。わたしはどれもたいした問題ではないとおもうのですが…。

ともあれ、あなたのこだわりが顔だろうが服装だろうが関係ありません。その思考方法に問題があるように思われるからです。

◆「現実主義」の陥穽
質問を読むと、あなたはある前提に立っていることが分かります。その前提とは、「彼のルックスはいま以上にあなた好みにはないならい」ということです。あなたの質問で問うているのは、「“いま”の彼のルックスで妥協できるか否か」であって、彼を「変える」、あるいは彼が「変わる」シナリオを最初から放棄してしまっているのです。かつて、戦後のオピニオンリーダーとして活躍した丸山眞男（故人）は、次のような発言をしていました。

現実とは本来一面において与えられたものであると同時に、多面で日々造られて行くものなのですが、普通「現実」というときはもっぱら前の契機だけが前面に出て現実のプラスティックな面は無視されます。いいかえれば現実とはこの国では端的に既成事実と等置されます。現実的たれということは、既成事実に屈服せよということにほかなりません。現実が所与性と過去性においてだけ捉われるとき、それは容易に諦観に転化します。「現実」だから仕方がない」というふうに、現実はいつも、「仕方のない」過去なのです。（丸山眞男「『現実主義』の陥穽」：1952年）

丸山氏がいうように、あなたは彼のルックスを「これが『現実』だからしかたない」とあきらめてはいませんか。人間なんて、服装のちょっとした違いで驚くほどに見違えるものですし、奥の手として整形手術もありますし、毛の濃い人なら脱毛・ハゲなら植毛という方法だってアリです。身長に自信が持てない人ならばシークレットブーツなどもあるではないですか。これらの手段を全て尽くした上で、あきらめるかどうかを決めればいいだけのことです。

彼をあなた好みに近づけていけば、自然とあなたは彼のルックスにも惹かれるようにもなるはずです。何よりも「彼を自分の手で変えて行くのだ」というその意志が、「彼のことがもっと好きなる」あなたへと変えてゆくのです。たまにはいいこと言うでしょ。